経験が浅くても転職できる人の共通点

「自分には、大した経験がなくて」

転職の相談を受けていると、この言葉を本当によく聞きます。応募する前から、すでに気持ちが半分折れている。こんな経歴で応募していいのか、書類の時点で落とされるんじゃないか。そう思うと、求人を見ても手が止まってしまう。

その気持ち、よく分かります。

ただ、転職市場の現場にいて、感じてきたことがあります。

経験が浅くても、しっかり決まっていく方はいます。そして、そういう方たちには、はっきりした共通点がありました。

今日はその共通点をお伝えします。その前に、企業が書類のどこを見ているかについて、押さえておきたいことがあります。少し現実的な話になりますが、ここを理解しておくと、そのあとの話がずっと役に立つはずです。

その前に、押さえておきたいこと

企業が応募書類を見るとき、経験の中身だけを見ているわけではありません。これまでの職歴の形、たとえば在籍期間や職を変えてきた回数といった項目にも、目は向けられます。ひとつの会社に腰を据えて働いた期間があるかどうかは、書類の段階で見られるポイントのひとつです。

これは、良し悪しの話ではありません。企業側からすると、採用には大きなコストがかかります。だから「入社してすぐ辞めてしまわないか」を、限られた情報の中で判断しようとする。その材料のひとつとして、過去の職歴の形が見られている。それだけのことです。

そして、ここが大事なところなのですが、こうした項目は、今のあなたにはもう変えられません。

過去は変えられない。だとすれば、そこに気持ちを注いでも、前には進みません。

お伝えしたいのはここからです。書類に書かれた事実は変えられなくても、それがどう受け取られるかは、変えられます。 そして、合否を分けているのは、実はそちらの方です。

現場で何度も見てきました。経歴の形だけ見れば不利なはずの方が、しっかり決まっていく。逆に、経歴だけは整っているのに、なぜか通らない方がいる。その差がどこにあったのか。ここから具体的にお話しします。

共通点①:自分の経歴に「ストーリー」がある

経験が浅くても決まる方の、いちばん大きな共通点がこれです。

自分がこれまで歩いてきた道のりを、一本の線として語れること。

たとえば、短い期間で職を変えてきた方がいるとします。書類だけを見れば、企業は「またすぐ辞めるのでは」と身構えます。でも、面接でこう語られたらどうでしょうか。

最初の会社では、まず社会人としての基礎を身につけたかった。次の会社に移ったのは、そこで見つけたやりたいことに近づくためだった。そして今、その延長線上で御社を志望している。だから今度は腰を据えて、この分野で深めていきたい。

同じ職歴なのに、受け取られ方がまるで変わります。転々としてきた人ではなく、目的を持って動いてきた人に見える。事実は同じでも、そこに一貫した意図が見えるかどうかで、印象は正反対になるのです。

逆に、決まらない方に多いのは、一つひとつの転職を「そのときの事情」として個別に説明してしまうケースです。あのときは人間関係が、あのときは残業が、と語ると、それぞれに理由はあっても、線がつながらない。聞いている側には、流されてきた人に見えてしまいます。

ここで大切なのは、嘘をつくことではありません。事実を並べ替えて、後付けで意味を見つける作業です。人は誰でも、そのときどきで何かを求めて動いています。その「求めていたもの」を掘り起こして、言葉にする。それがストーリーになります。

私が面談でよくやっていたのも、この掘り起こしでした。「なぜそのとき転職しようと思ったのですか」と一つずつ聞いていくと、ご本人が意識していなかった一貫性が見えてくることがあります。ご自身では「行き当たりばったりの経歴です」とおっしゃっていた方が、話しているうちに「自分はずっと、任される範囲を広げたかったんだ」と気づかれる。そうなると、面接での語り口が変わります。実際、それだけで通過率が変わった方を何人も見てきました。

以前、転職すべきか迷ったとき、確認したい3つのことという記事で、転職のきっかけを掘ると自分の価値観が見えてくる、という話をしました。あの作業は、そのままストーリーづくりにつながります。

共通点②:謙虚さが、態度に出ている

もうひとつの共通点は、謙虚さです。

抽象的に聞こえるかもしれませんが、これは面接の場ではっきり見えるものです。

経験が浅いことを自覚していて、それを隠そうとしない。分からないことを分からないと言える。相手の話をきちんと聞く。教えてもらう前提で、学ぶ姿勢がある。こういう方は、経験の不足があっても「うちで育てたい」と思ってもらえます。

反対に、経験が浅いのに、それを取り繕おうとする方がいます。知らないことを知っているように話す。質問に対して、話を大きく見せようとする。あるいは、うまくいかなかったことを環境のせいにして語る。こういう場面は、面接官には驚くほどよく見えています。そして、経験の不足そのものよりも、この姿勢の方がずっと大きな減点になります。

以前の記事でも書きましたが、企業がまず見ているのは「年齢相応のコミュニケーション力」です(自分の市場価値を知りたいなら、まずこれをやろう)。謙虚さは、その中核にあるものだと思っています。

ただ、この部分は自分ではなかなか気づけません。私も面談の場で、「その言い方だと、少し身構えて聞こえてしまうかもしれません」とお伝えしたことが何度もあります。たとえば、前職の話をするときに否定的な言葉が続いてしまう方。ご本人にはまったく自覚がなく、性格が暗いわけでもない。ただ、口癖のようになっていただけでした。使う言葉を意識してみましょうとお伝えしたところ、次の面接から手応えが変わった、とご連絡をいただいたこともあります。

そしてこれは、経験と違って、今日から変えられるものです。

共通点③:足りない部分を、自分で埋めようとしている

三つ目は、行動の話です。

経験が浅くても決まっていく方は、その不足を自覚したうえで、自分で何かをしています。

関連する分野の勉強を独学で続けている。資格の取得に向けて動いている。今の職場で、任されていない領域にも自分から手を挙げている。そういう小さな行動が、面接で語られたときの説得力はとても大きいです。

なぜなら、企業が見ているのは「今できること」だけではないからです。入社してからどう伸びるか、指示されなくても動ける人かどうか。それを推し量る材料として、自分から埋めようとした形跡を見ています。

すごいことをする必要はありません。「気になっていた分野の本を読み始めた」「業務の合間に使い方を覚えた」。その程度のことでも、自分の意志で動いた事実には価値があります。

面談をしていると、そうした行動をご自身では取るに足らないことだと思い込んでいて、面接でまったく話していない方が少なくありませんでした。「それ、面接で必ず伝えてください」とお伝えすると、驚かれることもあります。ご本人にとっては当たり前の習慣でも、企業から見れば、指示されなくても動ける人だという何よりの証拠なのです。伝え方を変えただけで評価が変わった例は、本当にたくさんありました。

変えられないものと、変えられるもの

ここまでを整理します。

過去の職歴の形は変えられません。書類の段階で不利に働くこともあります。それは事実です。

でも、合否を最終的に分けているのは、そこではありませんでした。自分の歩みを一本の線として語れるか。謙虚な姿勢が態度に出ているか。足りない部分を自分で埋めようとしているか。私が見てきた限り、決まっていく方はこの三つを持っていました。そしてこの三つは、すべて今から変えられます。

もうひとつ、忘れないでほしいことがあります。書類で不利に見えるかどうかは、応募先によってまったく変わります。以前の記事でも書いた通り、企業にはそのときどきで求めている人物像があります。ある会社では敬遠される経歴が、別の会社では「いろいろな環境を見てきた人」として歓迎される。土俵が変われば、評価は変わるのです。

だからこそ、一人で書類とにらめっこして落ち込むより、自分の経歴がどこで活きるのかを知る方が、ずっと前に進めます。

転職エージェントに相談すると、あなたの経歴を見たうえで「この経歴なら、こういう企業には響きます」という具体的な話が聞けます。彼らは日々、企業から「どんな人が欲しいか」の生の声を聞いているからです。自分では不利だと思い込んでいた経歴が、思いがけない場所で評価されると分かることも、珍しくありません。

経験が浅いことは、動かない理由にはなりません。あなたが積み重ねてきたものを、きちんと語れる形に整えていきましょう。